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お知らせ
令和5年7月29日
お客様、ありがとうございます。
エッセイスト大石邦子さんのお話です。
二十二歳の時にバス事故で、半身麻痺となりました。病室で二度目の冬を過ごして迎えた春。会津若松には名所の鶴ヶ城があり、三千本のソメイヨシノが咲き誇って花見客で賑わいます。
その夜も窓の向こうは夜桜見物でさざめいていました。孤独感が込み上げ、私は堪らなくなって大声で叫び、手当たり次第に物を投げつけました。私と同い年の看護婦さんが駆けつけました。彼女は黙って私に近づきました。私は彼女に物を投げつけ、投げる物がなくなると彼女のカーディガンを掴み、胸を叩き、泣き叫びました。それでも彼女は黙ってじっとしていました。
やがて私は声も嗄れ、手を動かす気力もなくなりました。すると、彼女が言ったのです。「ちょっと桜を見てこようか」私をタオルケットで包み、おんぶしてゆきました。彼女の背中の温かみが伝わってきて、麻痺した体が溶けていくようでした。
ああ、この人は私の苦しみも悲しみも一緒に背負ってくれている。私は一人で生きているのではない。多くの命の絆に結ばれて、生かされているのだ。素直にそう思えました。
本日のご来店心よりお待ち致しております。